歌舞伎町 阿弥陀如来の感想文

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舞伎町 阿弥陀如来~闇東京で爆走を続けるネオ・アウトローの不良社会漂流記
20代で手がけたカネは数百億、ドラッグをキメながら生放送に出演して物議を醸す…… 闇金、右翼団体職員として歌舞伎町の頂点に君臨した、破天荒な著者が綴る自伝的ノンフィクション。

 

小説は読まないけど、こういう裏社会の自伝とか結構好きだったりする。特に普段こういう裏社会と接点の無い人生を送ってると、ノンフィクションなのにフィクションに思えるほど映画的な楽しみ方ができる。被害者の人たちには申し訳ないけど、そういう楽しみ方でアウトローの自伝なんかを読む人も実際のところ多いんじゃないかな?

さて、この本は若くして闇金で成功した藤井学というアウトローの話なんだけど、血なまぐさい抗争の話ではなく、裏社会の1人の実業家の話である。「何かあった時に身代わりになる店長には優しくおかないといけない」と日頃からの信頼関係の重要さを説いたり、社員旅行と幹部だけを連れた旅行では明確に差をつけて特別感を演出したり・・・投資話の失敗だったりと、表社会の経営者と変わらないような、経営に関する事や、それに関わる苦労話がメインで書かれていて、私たちのような表社会の人間が読んでも参考になると思う。

著者は「闇金と詐欺とは別物であり、どこの金融機関からもお金を借りれない人を助けるつもりでやっていた。返さない方がむしろ詐欺師だ」というのは、たしかにとも思ったし、どこからもお金を借りれない人が、自ら承知で利息の高い金利で借りるわけだから自己責任である。

そういう考えだから闇金業自体に対しては罪の意識が全く無いのだろう。しかし、本人も他の媒体のインタビューで語っているように「生まれてきた事を後悔させるぐらい追い込む」という徹底した取り立てを行っていたそうで、そこは債務者に同情する。赤裸々に語っている本書の中にも「えげつない取り立て方法」に関して具体的な内容が書かれていないことから、債務者がどれほど悲惨な目に遭っていたのかは想像に難く無い。

裏稼業の世界は、ルールを守っている表稼業に比べて短期間で莫大な利益を手にできるか、逮捕のリスクや暴力のリスクなどの表社会では気をつけなくても良いリスクも多いので、裏稼業の人間は人生そのものにレバレッジを掛けた生き方をしていると言って良いのかもしれないと思った。

経営に関すること以外での著者のアウトロー話はサラっとした出てこないので、アウトロー話を期待する人にとっては少し面白みが無いかもしれないが、そういうのを期待している人にも興味深いであろうエピソードが、関東連合の中心人物との関わりやその後の対立、関東連合が狙っていた木村兄弟とのエピソードが出てくる場面だろう。

関東連合関係の不良話にしても、元幹部・柴田大輔の本や、瓜田純士の本でしか知らないけど、やはり同じ東京という街に住む不良ということで、著者も多少の関わりがあったようだ(著者の藤井氏は、六本木事件を起こした関東連幹部の2つ上の世代)。

こういう不良関係の本を読んでいると毎回思うのが、仕事に専念したいと思ってても、常に”不良の格”という目に見えない良くわからないものが付きまとうので、大変だな、と。

とにかく、この本はアウトローの世界の話ではあるものの、過去の不良話がメインではなく、裏社会の経営者の話なので読み物的な面白さは無いが、経営者視点で裏社会が垣間見ることができる貴重な本なのかもしれない。


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